世界最大の自動車市場・中国への売り込みは「新エネ車」で
環境規制強化でEVにシフト
世界最大の自動車市場と言えば、いまや中国だ。それもそのはず。中国の2016年の新車販売台数は2,802万台にも上り、8年連続の世界一だ。その中国で開かれた2017年の「上海モーターショー」には、世界初公開の113台を含む14,000台が展示され、各メーカーの中国への力の入れようがうかがえる。
中国、クルマの環境規制、先進国並みに
このうち電気自動車(EV)などの「新エネルギー車」は159台もあった。中国政府はクルマの環境規制を先進国並みに強化しており、これに対応するため日本のメーカー各社はEVの開発を急いでいる。中国が厳しい環境規制を進めるのには理由がある。あの「PM2.5」に代表される深刻な大気汚染への対策を迫られているからだ。世界一の巨大市場がクリーンなクルマを求めている以上、それに対応しようとするのは企業として当然の戦略。
ホンダの中国担当者は「EVを特急で開発している」と打ち明けた。同社の電動エコカーは、ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車(HV)をはじめ、コンセントから充電して電気走行距離を延ばすプラグインハイブリッド車(PHV)、電気だけで走るEVの順に、開発を進めてきた。だが、中国でのクルマの環境規制強化が明確になっため「開発の優先順位を変えた」という。2018年には、中国専用のEVを発売するというほどの力の入れようだ。
中国の大気汚染が深刻さを増すばかりで、環境対策は最優先課題になっている。
このため中国政府はPHVやEVなどを新エネ車として認定し、手厚い補助金を出して新エネ車の普及を促しており、2016年の販売は前年比53%増の50万台にまで成長した。
ガソリン車販売には 新エネ車現地生産が条件
2018年からは先進国並みの環境規制を導入する予定で、メーカーは一定量の新エネ車を現地生産しなければガソリン車を販売できなくなってしまう。最も売れるクルマがガソリン車であることには、中国も変わりはない。巨大市場で生き残るには、最も売れるガソリン車を販売する必要がある…というわけだ。となると、各社ともEVなどの開発にアクセルを踏み込まざるを得ない。日産自動車の専務執行役員は「(合弁相手を含む)EV生産でトップ3入りを目指す」と鼻息が荒い。
HVに力を入れてきたトヨタ自動車は、HVが補助金対象から外れたため、新たな対応を迫られた。まず2018年にPHVを市販し、数年以内にはEVを投入する計画だ。国のメンツをかけた中国の「環境汚染対策」という国策によって、クルマの売れ筋が変わるというのは、いかにも中国らしい業界事情と言えそうだ。